【基調報告2 子どもたちは今〜たつのこ村の背景】

たつのこ村村長   笠井 守(萱田小学校)


たつのこ村村長の笠井と申します。今、八千代市の萱田小学校で教員をやっています。

こどもたちは今、ということで、つい先だって八千代市でもって教育懇談会っていうのがありました。
そこで、清川輝基さんっていうNHKのディレクターの方がいろいろ講演やってたんで、そのことが今のこどもたちの状況を非常に的確にまとめてやってるんで、そこを中心に、レジュメに一応書いてきました。そこを見ながら話をしてみたいと思います。

タイトルは、「人間になれないこどもたち」っていうことです。どういうことかっていうと、今の日本のこどもたちっていうのは、心も体もすごい勢いでもって崩壊されてるんですね。その実態を、大人もあまり気付いていない。
で、そういう点でやっぱしそこをきちんとなおしておかないと、これから日本そのものがこう、ダメになっちゃうっていうそういう危機感を僕なんかはもっています。

で、まず、じゃあ日本のこどもがどういう点でおかしくなっているかって事なんですけど、まず一点は、心の問題です。
この前の、九州でもって六年生の女の子が同級生を殺しましたよね。カッターでもって殺すなんてことは今までの中で、学校でですよ!そんな事はなかったんですね。
で、その子は、殺したこどもは、その後の日でも、その、悪いことをやったっていう意識は、あまりないんです。その子はね。

で、突き詰めて考えてみると、彼女の場合はパソコンがすごく上手なんですね。それでパソコンとかファミコンとかああいうのは、リセットすれば元へ戻るんですよね。
リセットすれば。だから、そういう感覚でやるから、人間を殺してもリセットやるからまた生き返るっていう、そういう感じなんです。

アメリカでも前、その高校生がバーッと機関銃でもって、十何人ぐらい、殺した場合も、そのこどもが言うことには、「だって毎日何千人って人が死んでるんじゃないか」って、テレビとかなんかだって、そういうことやってるしね。
で、クリントンが言ったのはだから、今のこどもたちはもう今までに数万回の殺され、殺して、殺されている現場をね、見ている。

つまり、ビデオとかテレビなんかでね。だから、そういう点で、それが当たり前のことなんですね。
だから、そういう点で、やっぱしテレビとかっていうものの、メディアの問題をやっぱし大人がきちんと考えないと、どうしようもないことになっている。
例えば、こどもたちが、「人間が壊れる様子を見たい」なんていうことは、平気で言ってますからね。そういう状態なんです。前はそんなことはなかったですね。

それから、こどもたち同士の付き合い方がとっても下手なんです。
で、なぜかって言うと、ここにも書いておいたんですけど、多い子は1日六時間ぐらいね、テレビとかパソコンとかビデオとかっていう、それからファミコンとかってあると、やってるんです。
つまり、全部フラットな状態でもって、フラット、平らなね、平らの画面を見て刺激をずーっと受けてるんですね。

そうすると、人と人との会話ってのがないんです。一方的に、全部向こうからこう、送られてくるわけでしょ?
だからそういう点で、自分の頭を働かせていろいろ考えるっていうことがないんですね。
で、ひどい子は、テレビはもう24時間やってるんで、ずーっとついてますから、ただ呆然とぼけーっとやってるだけ、っていうそういう形になってるんです。
だから、人と人との関わりが、こどもはとっても、下手くそです。だからそういう点で、やっぱしビデオのことも含めて、大きな問題になってて、なってきていると思います。

それからね、体の問題であります。で、体はね、体力がすごーくダメになってます。
僕今二年生やってるんですけどね、もう、38年間教員やってみて、だんだんだんだんこどもがこう体力なくなってるのが、分かるんです。
だってこどもは、あんまり走ったり、それから外遊び、やってないもんね、こどもがね。うちでもってずーっといるんだもん。
それから、あっちこっち動き回るってことも少ないでしょう。だから、足の形が、人間の足ってのは、こう、五本と五本でもって、土踏まずでもって、こういうかんじでなってるんですね。
それが、こういう形になってるんですね、足が。だから、きちんと立ってられないんです。

で、そういう点からくると、どこに一番障害が出てくるかっていうと、背筋力に障害が出てくるんです。
今の中学の女の子は、もう、背筋力のレベルが、昔よりも、十年二十年と比べてみるとね、30%まで下がってるんです。
だから、そのこどもが、中学生ですよ、お母さんが今度は赤ちゃんを産むときになったら、おそらく自分の赤ちゃんを抱けないんじゃないかって言われてるんですよ。
つまりそこまで来てるんです。
だけどそういうことに対して気付く大人は、あんまりいませんよね。だから介護なんかおそらく出来ないと思いますよ。
お母さんを、自分のお母さんを抱っこしてベッドへなんてことは、これからのこどもは出来ませんよそれは。それほど深刻になってきてるんですよ今は。

それから視力もね、猛烈に減ってるんです。で、人間ってのは、元々猿から進化してるんですよね。猿っていうのは木から木へと渡ったりするでしょう?
それから、木の実とかなんかを摘むですよね。そのためには、両眼視が必要なんです。
目が前についてるんです。ところが、兎とか草食動物の場合は、敵から自分の身を守るために、目がこっちとこっちになってるんです。
だから両眼視じゃなくて、こういうふうに分かれてますから、外敵はすぐ分かるんです。ところが、距離感ってのはないんです。
人間はだから、前から見るから距離感が非常にあるんです。

ところがその距離感がきちんとできるためには、右の目と左の目の視力が一致してないとまずいんです。
こっちのが1.2でこっちのが0.5だったらね、距離感が見えないんです。
そういう状態まできてるんです。1日たとえば六時間で、テレビを3時間見る、ファミコンをやる、ゲームやる、あと、パソコンも今、ずーっとなってるでしょう?
そうすると、全部、電磁波でもってずーっとやられてますよね。
それから今、テレビはほとんどがカラーテレビでしょう?白黒だったらまだいいんですけど、カラーテレビで赤とか青ってのはすごく信号が強烈なんです。
それでもってずーっと浴びてれば、視力がダメんなるのは当たり前なんです。そういう点で視力も、もうダメになってきている。

で、足が、ダメ。そういう点から見ると、こどもは心も体もメタメタになってるんですね。で、その原因は、やっぱし僕はメディアだと思うんですね。
そういう点で今、進んでるところは、テレビを見ない日とか、テレビのあれを制限するとかっていう形をかなり今やってきてます。それをしないと。

ユネスコが、日本のこどもたちが今非常に危険な状態にあるっていうテーゼを出したんですね。そのことはほとんど日本人は知らないんですね。
そこまで、今、日本のこどもは深刻にきてるんです。だから、こどもが計算ができるとか本読みが上手だとか、そういうものが出来るから安心だ、だなんていうのは、とんでもない話なんですね。もうこれから、生きてけないんですよね。

で、時間が外に出られないから、どうしても、ひとりでしょう?それから全部与えられていることだから、人と人とのコミュニケーション能力がとっても下手なんです。だから、喧嘩をしますよね。
昔は僕なんかもしょっちゅう、ガキ大将でもって喧嘩やってんだけど、喧嘩をやればね、次の日また遊びたいから、必ず仲直りをしますよね。
だから、喧嘩をいっぱいやればやるほど、仲直りの仕方を学んでるんです。喧嘩っていうのはね、大切なことなんです。仲直りをするためには喧嘩をしなくちゃダメなんです。

ところが、みんな喧嘩しちゃだめ喧嘩しちゃだめ、喧嘩しちゃだめだっていうから、今の若いお母さんたちってのは。一旦喧嘩を始めると、もう仲直りができないんです。
それで、三人とか四人かで、友達の仲の良い人だけでもって、「まったくあの人たちはダメね、まったく…」っていう形でもってやってるわけでしょう?大人自身も仲直りの仕方もできないんです。

その、僕なんかに言わせると、大人になれきってない大人が、お母さんや、旦那さんもそうだけど、それが、子育てできますか?こどもが子育てをやってるっていう、今そういう状況になってる。こういう点ではやっぱり、すごい深刻な問題なんですね。

それから、こどもたちが今まで昔は、遊ぶ遊び場がいっぱいありました。野原とかもあるし、自然のなかでこどもたちがいっぱい遊んでたんですよね。
神社でも何回も行って、自由時間がいっぱいありましたから。そのなかでこどもたちは、たまには喧嘩もしたり、冒険をしたり、探検をしたりって形がありました。
それから、さっきの両眼視、目じゃないですけど、フラットじゃないですから、こういうところみんなフラットじゃないですから、遠近感もきちんと分かりますよね。
木があったり建物があったりってそん中でやってるから。だからそういう点で、人間の距離感覚とかいうことも、全て遊びの中で分かってきます。それから、あっち行ったりこっち行ったりってやるから、土踏まずもきちんと出てきます。
だからそういう点でそれから歩くから、当然、背筋力だってありますよね。

だからそういう点で、こども達に今、我々大人がやらなきゃくちゃならないのは、こどもたちに遊ぶ場をきちんと作ってあげることだと思うんです。
それから何よりも、こどもたちがそういうところで遊んだり、喧嘩をしたり、ガキ大将がぐるぐるぐるぐるやるっていう、そいういうような場をね、どれだけ作ってあげるかっていうことなんですよ。

だから、清川さんも言ったけど、パソコンなんか僕はね、中学校からでいいと思うんです。中学校からで。

で、八歳から十歳くらいまでの間に、人間の基本的な感覚っていうのは自分のものになっちゃうんですよ。人と人との関わり方、付き合い方、それから、あとは美しいって感じる感性。それから、人と人とでこうやってて、暖かさとかね。そういうのは、そこまでなんです。
8歳から10歳くらいまでの間にやっておかないと、もう、遅いんです。遅いんです。だから、そこまでの人間が大人になるための準備をやっぱし、小学校の3年生くらいまでに、きちんと保障する。場を保障する。そういう形を、やっぱし、やっておかないとダメなんですね。

それでこどもたちが外に出て、群れで遊ぶんです。群れで。というのは人間って言うのは、あの、例えば僕、ケニアに二回ぐらい行って野生動物の研究かなりやってるんですけどね、その、ネコ科の動物はだいたい一匹なんです。集団ではしないんです。
チーターは一匹で狩をするんです。
ところが、イヌ科の場合には一緒にやりますよね、集団でね。

それで、人間とか猿とかいうものはやっぱり集団なんです。だから、本来集団で生活している動物だから、集団の中で鍛えられないとダメなんです。集団の中で。
集団の中で鍛えられるっていうのはやっぱし、その前に友達と、3人とか4人とか5人とかって言うそういう友達の中で、行動する。遊んだり、ふざけたり、探検をしたり、冒険をしたり、たまには喧嘩をしたり、喧嘩をしてまた仲直りをしたり。
それから、その集団でやらなくちゃダメだって言うことがひとつなんです。

それから、もうひとつは、集団をやる場合でも、できれば、異年齢の集団の方がいいんです。全部小学校3年生だけ、小学校6年生だけっていうんじゃないんです。
そうじゃなくて、異年齢の集団があれば、5年生もいれば2年生もいる、その中でお互いに学びあうことが出来るんです。

例えば、ゲームをやってて、僕なんかもちっちゃい頃そんなんだったんですけれど、ちっちゃい子が味噌っかすだから、ここまで出来ればOKだよっていう、ちっちゃい子にはちっちゃい子なりのルールを与えて遊んだと思うんですよね。
つまりそういうのは、同年代ではないからできる。異年齢集団だからできるんです。それと、地域で遊ぶっていうのは大半がそうですよね。
皆同じ同級生じゃないでしょう?いろいろの学年の違いがあるから、異年齢で遊べるんです。そういう中でやるから、人間としての集団での、人と人との関わりとか、そういうことが学べる。
そういう形をね、これから僕たちがやっぱし作ってあげなくちゃならないんじゃないか。

そういう意味で、こどもの遊び場作りも含めて、僕たちは今、「たつのこ村」っていうのを、高木さんが中心になってやってくれたんで、やってます。
だからそこでも、あの広場のなかで、こどもたちの頭で、こどもたちが考えて、いろいろの遊び作りも再三やってもらっています。それも、こどもたちがいろいろの集団、同じ学年じゃなくて。そういう集団、男も女もいる。
それからそこに大人も入って、そういう中で、失敗をいっぱいやって、たまには怪我もして、怪我もするから、怪我に対してあれが出てくるんじゃないんですか?
失敗するから、もう次おなじ失敗をしないように努力すると思うんですね。だから、そういう場を、大人が作ってくってことが、とっても大切だと思います。

で、「たつのこ村」の活動については、この後、奥津さんがこの、経過みたいなこともやってくれると思うので、とりあえず僕のほうからは、こどもが今どういう状態になってるのかっていうことを、お話しました。以上です。